ComfyUIのApp Modeは、ノードグラフを消す機能ではなく、利用者に見せる入力と出力だけを絞って一画面にまとめる表示モードです。制作者はNode Graphでワークフローを組み、利用者はAppで値を変えて実行するという役割分担を、同じワークフローファイルの中で実現します。
情報確認日:2026年8月22日(日本時間)
結論:グラフは残したまま、触らせる項目だけを公開する
責任範囲
- App Modeの入り方とApp Builderの4ステップ(Inputs → Outputs → Preview → Default view)
- 利用者に公開する入力項目と、表示する出力ノードの選び方
- Node GraphとApp Modeを同じワークフローで使い分ける考え方
- ローカル保存とComfy Cloudの共有リンクの違い
- App Modeが向く用途と、Node Graphのままにすべき用途
ComfyUIのインストールや最初の画像生成はComfyUIの基本で、ワークフローファイルの構造はWorkflow JSONの読み込みと保存で扱っています。この記事は、すでに動いているワークフローがある前提で進めます。
App Modeとは何が変わるのか
変わるのは「見え方」であり、ワークフローの中身ではありません。Node Graphでは数十個のノードと配線がすべて表示されますが、App Modeでは制作者が選んだ入力ウィジェットと出力プレビューだけが並び、残りのノードは画面から隠れます。裏では同じグラフが同じ順序で実行されます。
公式ドキュメント(2026年8月時点)では、App Modeは「ワークフローの操作を簡素化し、独自の入出力インターフェースを定義する機能」と説明され、フロントエンドv1.41.13以降で利用できます。入り方は2つです。
- 画面左上のアイコンから切り替える
- ワークフロー名のパンくずメニューから「Enter app mode」を選ぶ
メニューの位置や文言はフロントエンドの更新で変わることがあります。この記事の名称は現行UI(2026年8月時点)のもので、手元のバージョンと違う場合は公式ドキュメントで最新の名称を確認してください。
「ノードを見せない」のではなく「見せる項目を絞る」と捉えると、設計の判断が楽になります。App Modeで隠したノードは、パンくずからNode Graphに戻ればいつでも編集できます。
App Builderで入力項目をどう選ぶか
App Builderは4ステップで構成され、最初のInputsで「利用者が変更してよい項目」を選びます。候補になるのは、テキストプロンプト、画像アップロード、モデル選択など、ワークフロー内のウィジェットです。
選び方の基準は「その値を変えると結果の意味が変わるか」です。利用者が変える必要のない値は公開しません。
| ウィジェット | 公開の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| positive prompt | 公開する | 利用者の目的そのもの |
| 参照画像(Load Image) | 公開する | 入力素材は利用者が持っている |
| checkpoint選択 | 用途による | 選択肢を限定できるなら公開、混乱するなら固定 |
| seed | 用途による | 再生成の違いを出したいなら公開 |
| steps・CFG・sampler | 原則固定 | 制作者が検証済みの値を使わせる |
| VAE・保存先prefix | 固定 | 利用者が意味を判断できない |
公開した項目には、Node Graphでのウィジェット名ではなく利用者に通じる名前を付けます。「text」より「生成したい内容」、「image」より「元になる写真」のほうが、初めて触る人の手が止まりません。
出力とプレビュー画面をどう設計するか
Outputsステップでは、Preview ImageやSave Imageなど出力ノードの中から、App画面に表示するものを選びます。ポイントは「利用者が見たい結果」と「制作者が確認したい中間結果」を分けることです。
- 最終画像のSave Image(またはPreview Image)は表示する
- マスク確認やControlNet前処理の中間プレビューは、利用者には不要なら表示しない
- 複数出力を見せる場合は、名前で区別できるようにする
Previewステップで実際の画面を確認し、Default viewステップで「そのワークフローを開いたときにApp ModeとNode Graphのどちらで始めるか」を決めます。利用者に配るワークフローはApp Modeを既定に、自分が編集中のものはNode Graphを既定にしておくと、開くたびに切り替える手間が減ります。
App画面での実行は「Run」ボタンで、実行中は「Cancel this run」で止められます。入力を変えて、Runを押し、結果が同じ画面に出る。この一往復が1画面で完結しているかを、Previewステップで必ず通して確かめてください。
Node GraphとApp Modeをどう使い分けるか
制作者はGraph、利用者はAppという分担が基本です。具体例で考えます。
Node Graphで作業する人
ワークフローを作る・直す
- モデルやLoRAの組み合わせを試す
- ノードの追加・配線変更・パラメータの検証
- エラーが出たときの原因調査
App Modeで作業する人
決まった処理に素材を通す
- 商品写真の背景差し替えを毎日繰り返す
- 社内メンバーがプロンプトだけ変えて量産する
- ComfyUIの配線を学ぶ予定がない人に渡す
同じワークフローを両方のモードで触り比べると、この分担が実感できます。次の手順で、利用者が触る項目数と操作数を自分の環境で数えてみてください。
再現手順:項目数と操作数を比べる
- 普段使っているワークフローをNode Graphで開き、1枚生成するまでにクリック・入力した回数と、画面上で値を変更できるウィジェットの総数を数える
- 同じワークフローでApp Builderを開き、InputsとOutputsを絞ってApp Modeに切り替える
- App Modeで同じ1枚を生成し、同じ2つの数を数える
| 記録項目 | Node Graph | App Mode |
|---|---|---|
| 画面上で変更できる項目数 | ||
| 1枚生成までの操作数 | ||
| 誤って触ると壊れる項目数 | ||
| 結果を見るまでのスクロール・移動回数 |
App Modeでは「変更できる項目数」が制作者の選んだ数まで減り、「誤って触ると壊れる項目数」は公開しなかった分だけ減るはずです。一方で「1枚生成までの操作数」は、必要な入力が同じなら大きくは変わりません。減るのは操作の数ではなく、迷う場所の数だと理解しておくと、App Modeに過剰な期待をせずに済みます。
保存・共有時に何を確認するか
App Modeの設定はワークフローと一緒に保存します。App画面でもCtrl+S(Mac: Cmd+S)で保存でき、保存したワークフローは左サイドバーのワークフロー一覧から開けます。
共有には2つの意味があり、混同すると「リンクが作れない」「相手の環境で開けない」という行き違いが起きます。
| 方法 | 何を渡すか | 相手に必要なもの |
|---|---|---|
| ローカル保存したJSONを渡す | ワークフローファイル | 対応バージョンのComfyUIと、同じモデル・custom node |
| 共有リンクを作る | URL | 公式ドキュメントは「Comfy Cloudのみ対応」と明記(2026年8月22日確認) |
ローカル環境のComfyUIでは、「Share」から「Create a link」で生成する共有リンクは使えません。リンクの有効期限や閲覧権限の仕様も公式ドキュメントに記載がなく、この記事では未確認です。社外の人に渡す前に、公式ドキュメントとCloud側の利用規約を確認してください。
ローカルでJSONを渡す場合は、App Modeの設定がファイルに含まれているかを確認する習慣をつけます。App Builderを通す前と後で保存したJSONをdiffにかけると、どのキーが追加されたかが読めます。公式ドキュメントには保存形式の詳細が記載されていないため、キー名はこの記事で断定せず、手元のdiffで確かめてください。
diff <(jq -S . before-app-mode.json) <(jq -S . after-app-mode.json)
差分が出た箇所がApp Modeの設定です。渡したファイルで相手がApp Modeに入れないときは、まずこの差分が相手側のファイルにも残っているかを見ます。モデルやcustom nodeが足りない場合の切り分けは、Workflow JSONの記事で扱っています。
App Modeが向くワークフロー・向かないワークフロー
向くのは「入力と出力が固定され、中身を変えない」用途です。向かないのは「組み替えながら結果を見る」段階の作業です。
| 用途 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 商品画像の背景差し替え(毎日同じ処理) | 向く | 変える値は画像とプロンプトだけ |
| 社内の画像量産ツール | 向く | 配線を知らない人が使う |
| 決まったLoRAでのキャラクター量産 | 向く | 強度やモデルは制作者が固定できる |
| 新しいモデルの比較検証 | 向かない | ノードの差し替えと配線変更が頻繁 |
| ControlNetの前処理を選びながら調整 | 向かない | 中間プレビューを見る必要がある |
| エラーが出ている状態 | 向かない | 原因のノードが画面に出ない |
判断に迷ったら「このワークフローを来週も同じ形で使うか」を基準にします。来週も同じならApp Modeにする価値があり、来週には配線が変わっているならNode Graphのままで十分です。
ワークフローが大きくなって入力の整理が難しい場合は、先にグラフ側を部品化する方法があり、別記事で扱います。また、App Modeではなく外部のWebアプリから実行したい場合はComfyUIのAPIが入口になります。
よくある質問
App Modeにすると生成が速くなりますか?
なりません。実行されるノードと順序はNode Graphと同じで、変わるのは画面表示だけです。速くなるのは「どこを触ればよいか迷う時間」です。
App Modeで隠したノードは利用者に変更されませんか?
App画面からは変更できませんが、パンくずからNode Graphに戻れば編集できます。改変を防ぐ仕組みではなく、迷わせないための仕組みと考えてください。
ローカルのComfyUIでも共有リンクは作れますか?
公式ドキュメント(2026年8月22日確認)では、共有リンクはComfy Cloudのみ対応と記載されています。ローカルではワークフローファイルを渡す方法になります。
まとめ
App Modeは、ノードグラフを残したまま利用者に見せる入力と出力を絞る表示モードです。App BuilderのInputsで「変える意味のある値」だけを公開し、Outputsで最終結果だけを表示し、Default viewで開いたときのモードを決めます。
保存はCtrl+Sでワークフローと一緒に行い、共有リンクはComfy Cloud限定である点をローカル保存と混同しないようにします。来週も同じ形で使うワークフローはApp Modeに、配線を変え続けている段階のものはNode Graphのままにしてください。